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名古屋地方裁判所 昭和60年(わ)760号 判決 1985年7月31日

本籍

岐阜県岐阜市蔵前四丁目一五番地

住居

愛知県津島市錦町一八番地

パチンコ遊技場経営

佐藤勝

昭和二五年一二月一六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官畠山光太郎並びに弁護人伊藤義文各出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月及び罰金一三〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和五六年五月二〇日以降、実父大野一郎こと黄南仙(一九二六年四月一八日生)から経営者の地位を引き継ぎ、愛知県津島市錦町一八番地所在のパチンコ遊技場「ダイヤモンド」(現在パチンコ機械二三五台、従業員一三名)を新装開店して経営してきたものであるが、同五六年五月頃右黄が賃借中の右店舗につき賃貸人松川商事株式会社(代表取締役松川政義)との間で契約期間更新をめぐる紛争が起り、同五七年四月二七日名古屋簡易裁判所において、同六一年一一月三〇日限り被告人において右店舗を明渡す条項などを内容とする和解調書が作成されたことなどから、右限定された経営期間中転業に備えて資産をできるかぎり多く蓄積するべく自己の所得税を免れようと企て、コンピューター「エースタック81」で集計管理の売上につき一定割合による減縮操作を施して売上金の一部を除外する方法により所得の一部を秘匿したうえ

第一  同五六年分の実際の所得金額が一九六二万五八九一円で、これに対する所得税額が六六九万一一〇〇円であるのに、同五七年三月一〇日、同市良壬町二丁目三一番地一所在の津島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六七六万八四一一円であり、これに対する所得税額が一一一万九〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額五五七万二一〇〇円を免れ

第二  同五七年分の実際の所得金額が四八六五万九八五〇円で、これに対する所得税額が二四〇〇万五八〇〇円であるのに、同五八年三月九日、前示津島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二四四万一三一九円であり、これに対する所得税額が二二万五六〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額二三七八万〇二〇〇円を免れ

第三  同五八年分の実際の所得金額が四五六六万八五六四円で、これに対する所得税額が二一五一万七三〇〇円であるのに、同五九年三月八日、前示津島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一三四八万六九八九円であり、これに対する所得税額が三五五万八九〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額一七九五万八四〇〇円を免れ

もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである(右第一ないし第三の各事業年度の修正貸借対照表、ほ脱所得の内容及び脱税額計算書は別紙1ないし18のとおり)。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の

1  当公判廷における供述

2  大蔵事務官に対する質問てん末書一一通

3  検察官に対する供述調書

一  大野一郎こと黄南仙(一二通)、西島総太の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  朴秀燁、高用煥、下村弘子作成の各上申書

一  大蔵事務官作成の

1  告発書

2  脱税額計算書説明資料

3  証明書(検甲第九号証)

4  査察官報告書一一通(検甲第一三、第一七ないし第二六号証)

5  写真撮影報告書

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の

1  脱税額計算書(検甲第二号証)

2  証明書(検甲第六号証)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の

1  脱税額計算書(検甲第三号証)

2  証明書(検甲第七号証)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の

1  脱税額計算書(検甲第四号証)

2  証明書(検甲第八号証)

(法令の適用)

被告人の判示第一ないし第三の各所為は所得税法二三八条一項に各該当するので、所定の懲役と罰金を併科するべく、情状により同法二三八条二項を適用して罰金を各免れた所得税の額に相当する金額以下とすることとし、以上はは刑法四五条前段の併合罪であるから懲役につき同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重いと認められる判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内及び罰金につき同法四八条二項により各罪の金額の合算額以下において、被告人を懲役一〇月及び罰金一三〇〇万円に処し、同法一八条四項一項により右罰金を完納することができないときは金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 早瀬正剛)

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